モノづくりで国際貢献を

モノづくりを支える「心のイノベーション」

もうひとつ、私が大切にしている言葉が、「モノづくりの根源は人づくりにある」です。当たり前のことですが、どんなに素晴らしい技術や発想があったとしても、それを実現する人の力がなければ、モノをつくることはできません。
では、人をつくるためには、どんなものが必要でしょうか?

私はそれは、「コミュニケーション」と「モチベーション」だと考えています。

地雷除去機開発を始めて数年間は、ただひたすら赤字が積み上がるばかり。
昼夜を問わず開発プロジェクトのスタッフを電話で呼び出したり、多少強引なところもあったかもしれません。

それでも、社員が信じてついてきてくれたのは、絶えずコミュニケーションをとり続けられたからだと考えています。この仕事は何のためにやっているのか。世の中にどう役に立っているのか。それを明確に示し、ときには居酒屋で焼き鳥を片手に、ときには耐爆実験で訪れた民宿で毛布にくるまりながら、「今は儲からないけれど、将来は明るい」と語り合ってきました。

最近、得意先に営業に行った社員たちが、よくこんな声をかけられるそうです。

「君たちの会社、地雷除去機をつくっているなんてすごいね」

こうした周囲の反応が、社員の喜びとなり、モチベーションになる。地雷除去活動を通じてお金にはかえられない“価値”が生まれたことで、「自分が責任と誇りを持って仕事をしていく」という意識へ自然と変化していくのです。

モノづくりに、新しい技術の発明や新しい事業の開発といったイノベーションが必要なように、人づくりにはこうした「心のイノベーション」が欠かせません。心に発展性がなければ、人も会社も育っていくことはできないのです。