カンボジア王国編

地雷原のジャングルを
豊かな大地に変えていく

1. カンボジアでの地雷除去は7割が「草や潅木(かんぼく)を取り除く」こと

カンボジアは、日建会長・雨宮清が地雷除去機の開発を決意し、その第一号機を納入した、まさにスタートラインとなった場所。この国には、約20年にわたる内戦で埋められた、500万個以上と言われる地雷が残されているのです。私たちがカンボジアの地でこれまで行ってきた活動に加えて、最新の現場からのレポートを随時ご紹介していきます。

1995年、地雷除去機開発のために、まずカンボジアの地雷原で現地調査を始めました。そこで聞かされたのは、「カンボジアの地雷除去の7割は草や木を取り除くことにある」という事実。熱帯雨林のカンボジアでは植物の成長が早いため、内戦の際に地雷が埋められた場所の多くは、すでにジャングル化しているのです。

私たちがいまも日々連携をとって作業を進めている「カンボジア地雷対策センター(CMAC)」では、当時、手作業で地雷の除去を行っていました。

草木が成長しジャングル化した地雷原

手作業による潅木伐採

手作業での地雷除去はまず、鎌やナタ、のこぎりなどで木を伐採する作業からスタート。大木や硬い竹が生えているところは、強力な草刈機を使ってみてもはね返されてしまい、大変な困難を強いられます。

ようやく地面が姿を現したところで、探査器をかけて、反応があれば指し棒で刺して地雷の場所を確認。そして、スコップとハケでひとつひとつ除去していくのです。こんな具合ですから、わずか1平方メートルの地面を安全な状態にするまで、平均して2時間もかかっていました。

さらに調べていくうち、カンボジアの地雷には、たくさんの種類があることがわかりました。人間の手足だけを狙う小型の地雷、鉄球や破片が飛び散って多くの人を殺傷する指向性地雷や跳躍型地雷。さらに、大型の対戦車地雷やベトナム戦争時に投下された爆弾が爆発しないまま残ってしまった不発弾……。

いったい、どうやって効率よく生い茂る草や灌木を伐採し、多種多様な地雷を除去すればいいのか。そこで私たちが思いついたのが、油圧ショベルの先に高速回転する金属の刃(ロータリーカッタ)を取り付けた構造の地雷除去機でした。

カンボジアで発見された地雷

それ以外にも問題はいくつもありました。カンボジアの土は、鉄やアルミニウムなどの成分が含まれた「ラテライト」と呼ばれる性質のもの。乾いた状態ではかなり固くなるため、地雷除去機のカッターの磨耗がとても早いのです。また、金属の成分に反応してしまうため、探査器の精度も落とさなければなりません。

さらに、カンボジアは1年の半分以上が雨期(5〜10月)※1。乾期には土が硬いので、地面の下5〜10センチに埋まっている地雷は踏んでも爆発しませんが、雨期になって地面がやわらかくなったとたんに爆発するのです。

生い茂った潅木(かんぼく)を伐採処理するロータリーカッタ

草の下に隠れている地雷が雨期には水に流され移動してしまう

また、雨期になると、畑や道路などいたるところが水浸しになります。そのおかげで土に栄養分が行きわたり、作物を育てることができるのですが、これが除去作業にとっては大敵。軽くて小さいタイプの地雷が、水に浮いていつのまにか流されてしまうからです。安全になったはずの場所に地雷が流れ着き、再び被害者を出してしまう。そしてまた最初から除去作業をやり直す。まさに終わりのないイタチごっこが続いていました。

木の問題、土の問題、水の問題……。地雷除去機開発プロジェクトのスタートとなったカンボジアは、世界各地で除去作業を行っているいまもなお、私たちにとってもっとも難しい場所です。

こうした問題にぶつかるたび、私たちは地雷除去機に改良を加えていきました。ロータリーカッタドラムに40本の刃で対人地雷を掘り起こし爆発させて処理する「油圧ショベル型ロータリーカッタ」。そして、カッターの代わりに鎖にハンマーをつけることで、対戦車地雷に遭遇してしまっても耐えられるパワーと強度を誇る「油圧ショベル型フレールハンマ」。広大な地域では、幅3mのフレールハンマで地雷を爆発させて処理する「プッシュフレール型」など。

いま、カンボジアで活躍している約40台(※2012年5月現在)の対人地雷除去機は、これまで1台も壊れることなく、現場で働き続けています。油圧ショベルの稼働時間の限界は6,000~8,000時間程度とされていますが、機種によっては累計稼働時間が1万数千時間にもなり、異例の記録をいまもなお更新しています。

※1 「国際機関日本アセアンセンター」サイトより